
あなたが働いてる職場に派遣社員はいるだろうか。もしいるのであれば、どんな業務をこなしているだろうか。
派遣社員は、派遣元の派遣会社と派遣先の企業が労働派遣契約書を結び、書類に書かれた業務を行うことで、派遣先をサポートする働き方だ。派遣社員として働くには、派遣会社に経歴などを登録した後、派遣会社に求人を出している企業と面談し、マッチングすれば就業が始まる。面談では、過去の業務経験やスキルについて質問されることが多く、即戦力として期待される場合が多い。
その中でも、業務上必要なことや正社員からの質問に対し、派遣社員が正社員に仕事を教えることは問題ないが、新人教育や正社員のスキル向上を目的としたような教育業務は、原則不可能となっている。
なぜ、派遣社員が正社員に教えることがいけないのか?
この記事では、派遣社員が働いているうえで、正社員を教えることがいけない理由と、もし教えることになってしまった際の対策も解説する。本記事を読むことで、より良い職場で働くことになる可能性もあるので、ぜひ最後まで読んでみて欲しい。
なぜ、派遣社員が正社員に教えることがダメなのか?

ここで、どれくらいの派遣社員が働いているのか紹介したい。
下記グラフによると、平成30年の日本の労働人口5,596万のうち、2,120万が非正規雇用として働き、そのうち294万人が派遣社員として働いている。

つまり、約40%が非正規労働者であり、非正規雇用労働者なくして、企業の経営は成り立たない。その中でも、仕事ができる派遣社員がいるのは当たり前なことで、例えば正社員の新入社員の研修や指導を派遣社員が担当することが起きてもおかしくない。
ここからは、なぜ派遣社員が正社員に教えるのがダメなのかを紹介する。
理由:労働者派遣法に違法だから
派遣社員は、希望する派遣先と面談し、派遣先と派遣元で締結された契約に基づき、業務をこなしている。その際、派遣元と派遣先で労働派遣契約書を作成し、派遣社員は書類に記載された内容に則って業務だけを担当しなければならない。
具体的には、「書類整理」「プレゼンテーションの資料の作成」「電話応対」など、簡単ではあるが、企業側が希望する業務内容について書かれている。その多くは正社員の業務サポートやマニュアル化されたような仕事だ。
そのため、正社員を教える「当社新入社員への業務指導」のようなことが記載されていれば、正社員を指導することはできる。しかし、「当社新入社員への業務指導」が書かれていない場合、労働者派遣法違反になってもおかしくない。
・業務の内容は、その業務に必要とされる能力、行う業務等が具体的に記述され、当該記載
により当該労働者派遣に適格な派遣労働者を派遣元事業主が決定できる程度のものであるこ
とが必要であり、できる限り詳細であることが適当である。・従事する業務の内容については可能な限り詳細に記載すること。
(例 環境関連機器の顧客への販売、折衝、相談及び新規顧客の開拓並びにそれらに付帯す
る業務)・同一の派遣労働者が複数の業務に従事する場合については、それぞれの業務の内容につい
て記載すること。
ただ、再度言及するが「業務において、派遣社員が正社員に教えること、すべてがダメ」なわけではない。業務上、正社員が派遣社員に聞きたいことがある場合、労働派遣契約書に書いていないから無視するのではなく、質問に応じなければならない。
あくまでも、労働派遣契約書にはない「正社員への研修や指導」がダメであり、業務中に生じた質問への対応や正社員へのサポートは行う必要がある。
派遣社員が正社員に教えることになるのはなぜか?

インターネット上では、実際に派遣社員として働いている方々から「正社員への指導を任せられた」との声がいくつもあがっている。したがって、現場では労働者派遣契約書に記載されていないにもかかわらず、派遣社員が正社員への指導を行っているのが実情だ。
このように、なぜ実際に派遣社員が正社員の指導を行っている現状があるのか。以下、原因と理由について紹介していく。
理由①:企業側が「教えることや研修が違法」であるのを知らない
派遣社員を雇用するか否かは、人事ではなく現場のリーダーや管理職が決める場合が多い。そのため、正社員の新入社員を教育・研修することを派遣社員に任せるのが法律違反なのを知らないケースがある。
また、派遣会社と企業の窓口は人事部になるが、大企業の場合、多くの人事担当者がいる。そのため、労働者派遣法に詳しい人がいる可能性はあるが、中小企業は人事担当者も少人数のため、労働者派遣法を知らないまま派遣社員を受け入れざるを得ない。
これらが要因で、現場で派遣社員が正社員を教えることが発生していると考えられる。
理由②:多忙で正社員が研修をする余裕がない
派遣社員は、正社員では担当しきれないところをカバーするために雇用される。したがって、多忙な正社員が担当しなくてもいい業務、例えば電話応対や会議の議事録の作成は派遣社員が担うことが多い。新入社員への業務指導も同様で、先輩の正社員が担当したいところを、多忙であるまたは重要な業務を任されている状況から、「新入社員への業務指導も派遣社員が担当」と考える企業もある。
「責任重大な業務は正社員が担当し、責任が重大ではない業務は派遣社員が担当する」
上記は、派遣社員と正社員に対する世間一般の認識であるが、もし、正社員への指導を「誰でもできる業務」と考えているのならば、派遣社員が担当にされてもおかしくない。
このように、人材育成はそれほど重要な業務でないから、派遣社員に任せても問題ないと判断された場合、正社員の研修や指導を任されるだろう。
理由③:派遣社員のビジネススキルが高い
中には、多くの職場を経験した分だけ専門知識や技術を身に付けたく、あえて派遣社員で働いている人もいる。とりわけ、エンジニアやデザイナーのような専門知識と技術を要する職種に多い。
なぜ、あえて派遣社員で働くかというと、専門知識と技術があれば、時給が高い企業や在宅勤務やフレックスタイム制を導入してる企業で働くことが可能だからだ。したがって、正社員への雇用を変更しないかとスカウトされても、意図的に派遣社員もしくはフリーランスで働いている方が多い。
しかし、正社員よりも技術力があると評価された場合、正社員か否かに関係なく、現場リーダーの判断で新人指導への担当を任される場合がある。専門技術だけでなく、コミュニケーションスキルも長けていると評価された場合、正社員への指導をお願いされるケースも考えられるからだ。
派遣社員が正社員に教えることになった時の対処法とは?

これから紹介する方法が、派遣社員が正社員を教えることになった時のベストな方法だと考える。どの方法も正解なので、自分に合った方法を実行してみてほしい。
方法①:マネジメント業務を労働者派遣契約書に追記してもらう
労働者派遣契約書に記載されていない正社員への指導を任されたが、派遣先の職場環境がいいため、このまま同じ場所で働きたい。
そのように考えたら、派遣会社の営業担当へ連絡しよう。派遣元と派遣先で調整し、「正社員への研修や業務指導」を労働派遣契約書に追記してもらうといい。その際、業務への負担が増加するため、労働時間に対する時給をあげる交渉をしてもかまわない。
派遣社員として働くうえで、派遣会社の営業担当はメンターのような存在なので、どんどん感じたことは相談しよう。
方法②:雇用形態を正社員や契約社員にできないか交渉する
次に、雇用形態を変更する方法も考えられる。つまり、派遣社員をやめ、契約社員や正社員として働くことだ。
派遣社員は企業側からすると、あくまで外部の人間である。したがって、担当をお願いしたい業務があっても契約外のため、派遣社員が成長する機会を失っている場合も否定できない。
しかし、雇用形態を変更することで、書類に記載された業務だけできるような縛りがなくなるため、正社員への指導についても躊躇なく取り組むことができるのだ。
もし、正社員への指導を含め、派遣社員だからできない業務をこなしてみたい方は、ぜひ近くの正社員に相談し、雇用形態を変更できないか検討してみよう。
方法③:派遣社員のメリットを活かし、派遣先を変える
どうしても正社員を教えるのをやらざるを得ない場合、派遣先の変更も視野にいれよう。
派遣先企業の判断によるが、派遣社員の契約更新は3か月ごとが多く、契約の更新時期が近づいてきたら、営業担当の方から次回も更新するか否かの連絡が来る。その際、事情を説明の上、新しい派遣先を紹介してもらおう。
短期間で雇用先を変更できるのが派遣社員として働くメリットだ。現場とうまくいかない場合は遠慮なく、営業担当の人に相談し、派遣先を変えてもらうのがベストである。
派遣社員が正社員に教える必要はない!困ったら派遣会社に連絡しよう!

労働派遣契約書に「正社員への業務指導」が記載されていなければ、正社員を教えることは法律を破っていることになる。それでも、派遣社員が正社員を教える状況に陥っている原因は以下の通りだ。
- 企業側が「教えることが違法」であるのを知らない
- 多忙で正社員が研修をする余裕がない
- 派遣社員のビジネススキルが高い
そして、正社員への業務指導を任されることになりそうなら、以下の方法をとってみよう。
- マネジメント業務を労働者派遣契約書に追記してもらう
- 雇用形態を正社員や派遣社員にできないか交渉する
- 派遣社員のメリットを活かし、派遣先を変える
我が国の派遣社員は、責任を伴わない仕事を担当する人と考えられている。しかし、それは間違った認識だ。あくまでも、契約に即した業務をメインに担当する。もし、仕事をしていて正社員の指導を任せられたら、労働派遣契約書に記載追加、または雇用形態を変えていただき、それでも納得いかなければ、派遣元に連絡をして派遣先を容易に変更しても問題ない。容易に就業先を変更できる点が派遣社員のいいところだ。ぜひ、営業担当や企業の方に相談して、自身にとって働きやすい働き方を追及しよう。






