
「公務員になれば、一生安定」「毎日、定時で帰ることができる」
これらのフレーズは誰もが1度は聞いたことがあるだろう。しかし、実際の公務員の現場では、必ずしも「一生安定」「毎日定時帰り」は該当しない。
膨大な業務量で、深夜まで働いている公務員もいれば、業務量が極端に少なく、暇を持て余して毎日定時で帰る「窓際族」の公務員もいる。公務員になるために、膨大な公務員試験対策をし、難易度の高い採用試験を突破して、公務員になっても、長時間労働をすることになったり、窓際族になったりして、退職する公務員が多いのも事実だ。
実際、筆者も公務員として働いた経験があり、長時間労働が原因で退職したり、窓際族になったりしてしまった同僚を見てきた。
そこで、本記事では「窓際族になる公務員」に焦点を当て、窓際族の公務員が存在する理由と実際に窓際族になった時の対策について解説する。窓際族は、公務員だけでなく民間企業にもいるため、民間企業で働く方にも参考になるはずだ。ぜひ最後まで読み進んでみてほしい。
窓際族の公務員が存在する理由

窓際族の公務員が生まれる理由を紹介する前に、改めて窓際族について説明したい。
窓際族とは、出世コースから外れ、重要な仕事を任されない、業務量が極端に減った中高年の社会人を意味する。1977年6月の北海道新聞のコラムで紹介された造語であり「閑職」「社内ニート」とも表現され、いわば民間企業で仕事がない中高年を揶揄した言葉だ。任された少量の仕事をこなしつつも、窓際の自席で新聞や社内の資料を読んでは時間をつぶし、定時になったらすぐに帰る。
当時の北海道新聞のコラムでは、そのような特徴がある窓際族の存在については民間企業だけフォーカスされたが、決して民間企業だけの存在ではない。窓際族は、公務員にも存在する。
それでは、なぜ公務員にも窓際族が存在してしまうのか。以下の項目において、窓際族の公務員が存在する理由を解説する。
理由:早期退職がない「ぬるい」体質
公務員の大きな役割は、民間企業と違って利益を追及するのではなく、国民への公共サービスを提供することだ。民間企業は、開発された商品やサービスを消費者に提供し、その対価として得た売り上げを資金源として活動する。それに対し、公務員は納税の義務がある企業や国民が税金を収めるため、公共サービスを提供するための資金源が安定的に確保されている。
したがって、犯罪のような不法行為で懲戒免職にならない限り、業績の悪化による人員整理の退職勧奨や解雇をする制度が公務員にはない。このように、業績に貢献していなかったり、日々の職務が怠慢だったりしても解雇できない「ぬるい」体質が、窓際族の公務員を存在させた1つの要因だ。
それでも民間企業と同様に、公務員でも早期退職の募集は行われていて
職員の年齢別構成の適正化を通じた組織活力の維持等を目的として、45歳以上(定年が60歳の場合)の職員を対象に、透明性の確保された早期退職募集制度を創設。
平成25年11月1日から本制度に基づく退職(応募認定退職)が可能となった。
公務員の場合、早期退職をするかはあくまで任意のため、退職勧奨による早期退職はない。ただ、自己都合退職という名目で早期退職をするのは十分に可能である。そのため、窓際族の公務員になってしまった結果、居心地が悪く早期退職制度を利用して退職する人も少なくない。このように、窓際族になって懲戒免職になることはないものの、自ら退職をしていく公務員は存在する。
窓際族の公務員の存在は、何が問題か?

窓際族の公務員になると、大量の仕事を任されず責任が大きい仕事も任されないので、そのほうが楽だと思ったかもしれない。しかし、長期的に見れば、窓際族の公務員の存在は行政にとってマイナスだ。
したがって、以下の項目で、窓際族の公務員の存在の何が問題かを解説する。
問題1:業務量が少ないのに年収が高い
窓際族の公務員はコストパフォーマンスがいい働き方だ。なぜなら、業務量が少ないにもかかわらず、年収が高いからだ。ただ、勘違いしないでほしいのは、窓際族の公務員が決していいわけではない。例えば、総務省が行った「令和2年4月1日地方公務員給与実態調査結果」の結果を見ると、3年未満の公務員の場合、月々の収入が20万円以下だが、将来の行政を担う存在のため、多くの知識を身につけては経験していく。時には慣れない業務をすることもあるため、激務で残業が続く日もあるだろう。
一方、窓際族の公務員はそうではない。彼らは激務から離れ、単純な業務をこなすため、若手と比べ圧倒的に業務量が少ない。しかも、公務員は年功序列の風潮が強いため、年齢が上であればあるほど、年収が上がっていく。つまり、新人の公務員がたくさん働いているのにもかかわらず年収が低いのに対して、あまり働いていない中高年の窓際族の公務員が年収が高い。

引用元: 総務省「令和2年4月1日地方公務員給与実態調査結果」
そのような不平等な状況を良しとしていいのだろうか。
このように組織の間で不公平感が生まれている現実に対し、業務へのモチベーション低下へと繋がっていくのが窓際族の公務員が存在する上での問題である。
問題2:年齢の若い職員が、希望を持って働けない
もう1つの問題は、若手の公務員にとって窓際族の公務員の姿が、10〜20年後の自分だと想像できてしまうことだ。働いていると、どうしても今後のキャリアプランを考えてしまう。
そのため、現場では窓際族の公務員を出さないよう、評価制度を変えるなどで工夫をしているものの、専門家は、若手の公務員が窓際族の公務員になってしまう未来は変わらないと予想する。
彼らは年を取れば「窓際族」となっていく。若手社員の間では「なぜ仕事のできない人が、自分たちより高い給与を取るのか」という不満が膨れ上がるが、実はその若い社員の多くが同じ運命をたどるのである。
引用:2020年8月5日東洋経済オンライン「公務員の評価が「A」「B」に偏る日本型人事の害悪 ~「窓際おじさん」はいかにして再生産されるのか」~
このような現状から、今は目の前の業務を一生懸命こなす若手公務員でも、将来の自分のあり方に絶望し、高いモチベーションを保てなくなってもおかしくない。中には優秀な若手公務員で退職をする人も出てきて、人材不足に陥るのも考えられる。
窓際族の公務員になったときの対策は?

窓際族の公務員が生まれる理由と問題がわかったところで、実際に窓際族の公務員になった場合、どうすればいいのか。世間では、「業務量が多すぎる=辛い」なのは認知されているが、「業務量が少なすぎる=辛い」は認知されていない。実際、筆者の経験でも、業務量が多すぎるのも辛かったが、業務量が少ないのも非常に辛かった思い出がある。
ここからは、実際に業務量が少ない窓際族の公務員になった場合の対策を紹介する。
対策1:職務の役割の変更を直訴する
窓際族の公務員になった場合、周囲からは「仕事を任されなかった人」「仕事ができなかった人」と評価される。しかし、このまま「能力がなかった人材」として、組織に存在していいのだろうか。もし、自ら評価を変えたいと思うならば、人事や上の方に業務における役割の変更を直訴してみるといい。職務の役割変更の直訴は、やる気をアピールすることになり、担当の配置転換や副担当に抜擢されることも考えられる。
また、直訴が叶わなかったとしても、激務になっている同僚のサポート役に徹するのがいいだろう。窓際族になって浮いていた時間を、同僚のサポートへ充てることで、同僚の業務負担が軽減され、信頼関係に繋がり、評価も変わるはずだ。そのような小さな行動が、組織からの評価も変わり、窓際族を脱却できる1つの方法として考えられる。
対策2:民間企業や他の行政機関の公務員に転職をする
現場で働いている人を評価するのは、人事や自分より役職が高い人であるため、最善を尽くしても評価が変わらない場合もある。その時は、いっそのこと転職するのもありだ。
公務員は民間企業に転職できないと思われがちだが、公務員から民間企業に転職した人はたくさんいる。さらに、受験資格があるならば、経験枠として他の行政機関の公務員に転職するのもいい。
転職する際は、窓際族の公務員だったことよりも、これまで公務員として働いてきて経験してきたことや学んできたこと、実績をアピールし、どこで貢献できるかを伝えられると最高だ。転職で職場環境を変えて働きやすくなった結果、人生を変えてきた方が多くいるので、転職も視野に検討してみてはいかがだろうか。
窓際族の公務員になってもメリットはない!

窓際族の公務員になった場合、確かに責任の大きい業務を任されず業務量が減って、楽だと考える人もいるだろう。しかし、周りからの評価は「仕事ができない人」「仕事をしないで給料をもらっている人」だ。しかも、窓際族の公務員は決して自ら望んでなるものでもない。これまでの業務を評価してきた人が決めるものなので、不運にも窓際族になった人もいる。改めて、本記事の内容を要約する。
- 窓際族の公務員が存在する理由:退職勧奨や解雇がない「ぬるい」体質
- 窓際族の公務員の問題1:業務量が少ないのに年収が高い
- 窓際族の公務員の問題2:年齢の若い職員が、希望を持って働けない
以上が窓際族の公務員が存在する理由と問題であった。また、窓際族の公務員になってしまった時の対策は、以下の通りである。
- 対策1:職務の役割変更を直訴する
- 対策2:民間企業や他の行政機関の公務員に転職をする
公務員になって、1つでも上の出世コースを歩みたかった人からすると、窓際族の公務員になって出世コースから外れるのは残念なことかもしれない。しかし、決してそこで「人生が終わった」「公務員としての価値がない」と思わないでほしい。
職場には、毎日長時間労働をして苦しんでいる人もいる。そのような人を窓際族の公務員になるまでの経験から、激務の同僚をサポートできるはずだ。また、窓際族の公務員になった自分が嫌なら転職してもいい。
状況を変えられるのは、すべて自らの行動だ。もし、窓際族の人間になってしまい状況を変えたいのなら、勇気を出して行動しよう。






