
一般的な学部に通う大学生(経済学部・教養学部・医学部など)とは対照的に、美大生は就職とかけ離れたイメージを持たれる。
美術大学自体あまり世間に知られる教育機関ではないため、余計にそう考えられやすい。大抵の人物が持つ美大の印象としては「デッサンの描き方を勉強する」「自力で工芸品を作りあげる」程度なのではないだろうか。さらに言えば「実践内容はあくまで趣味の延長線上のようなもので、就職活動を有利に進めるのは困難」と考える者も居るはずだ。
もちろん美大卒には美大卒ならではの進路があって、イラストレーターやインテリアデザイナー、アートディレクター、漫画家など、美術大学を卒業した学生の就職先は様々である。それでもなお、就職できないイメージが美大生に付き纏うのはなぜだろうか。本記事ではその原因や理由、さらには就職活動にチャレンジする際のアドバイスに言及する。
就職できないのではないかと危惧する方はぜひ、本記事の内容を参考にしてほしい。
美大卒が就職できないと考えられる原因・理由について

美大卒が就職できない原因として、考えられるのは就職先となる美術系企業の希少さ、就職率・内定率の低さだ。
これらの理由により、美大生は就職が不得意なイメージを持たれてしまっている。まずはそれぞれの原因について理解しよう。
就職先を見つける難易度の高さ
美大生は就職先を見つけるのが難しいと言われている。たとえば「代表的な美術系企業を一つ挙げろ」と言われて咄嗟に言及できる者は決して多くないはずだ。
いきなり問いかけられたところで、各地方に点在する美術館やギャラリーの存在に思い至る程度ではないだろうか。
入学時点で将来に対する明確なビジョンを持っていなければ就職の難易度が大きく上がる。これは美大生以外にも当てはまる問題ではあるが、それ以上に美術系企業が希少な存在だということを忘れてはならない。
美術系企業は希少な存在なのか?

美術関連の仕事に就くのはフリーランスが多数を占めている。実際、日本には『文芸美術国民健康保険組合』と呼称されるフリーランスのための団体があるほどだ。加入義務はないが、個人事業主にとって非常に利便性が高いのが特徴である。
第一線で活躍するデザイナーやイラストレーターを複数人抱えている企業をみかける機会も当然あるが、近年はフリーランスの需要が高まる傾向にあり、企業に所属せず個人事業主として生きることを選択する人物が増えているのが現状だ。自分の裁量で仕事できる点に憧れる者が増えているのだと推測できる。飲食・IT業界などと比べて業界の規模・企業数が少なく、フリーランス需要が上昇し続けている事情も合わさって、美術系企業に希少価値があるのだと考えられるだろう。
就職率・内定率が年々減少している
株式会社ユウクリが運営する機関『クリエイターワークス研究所』の調査結果によれば、2022年卒の美大生の内定率は6月末時点で21.1%しかなかった。これは1〜3社以上の企業に内定を貰った人物の総数であり、つまりはこの場合、70%を優に上回る美大生の進路が決まっていないことを指している。
さらに、クリエイターワークス研究所によれば美大生の就職率・内定率は減少傾向にあることも判明しており、就職活動を始めても上手くいかない学生が増えているようだ。蔓延していた「美大卒は就職できない」というイメージは完全に誤ったものではなく、厳しい状況を的確に示しているとも考えられる。
とはいえ、コロナ禍による影響が薄れて状況が好転していく可能性も充分にあるはずだ。企業によって求められる能力も変化するため、諦めずに挑戦することが就職への近道になるのではないだろうか。クリエイターワークス研究所の調査結果では下記の項目に関する具体的なデータを閲覧できる。
・ポートフォリオ準備開始時期
・個別企業説明会(対面)に行きはじめた時期
・プレエントリー社数
・個別説明会参加回数
・エントリーシート(書類)提出社数
・面接(対面による選考)を受けた社数
・入社予定企業の就活開始当初の志望状況
・入社予定企業の満足度
・入社を決めた理由
・内定後、入社意識が高まったもの
・就活中の相談相手
・就職活動で利用した企業サービス
・オンライン選考
美大生が就職するにあたって参考になるため、就活前に目を通すのがベストだ。
美大卒が就職できないと呼ばれる原因を断ち切るにはどうすれば?

美術関連の仕事に就く難易度の高さ、美大生の内定率・就職率の低さを紹介したからといって「美大生は絶対に就職できない」と言いたいわけではないことを先に断っておく。フリーランスとして活躍する道があるのはもちろん、正しい選択肢を取ることができれば美術系企業へ就職するのも難しくはないのだ。
また、美大生には大学院へ進む道も残されている。就職先が見つからないだけで「自分は就職できないのではないか」と不安に思ったり、全てを諦めてしまうのは早計だ。肝心なのは柔軟な思考を持つこと、資格を取ることの二点に尽きる。就職に対する不安を断ち切るにはどうすればよいかチェックしよう。
もっとも肝心なのは有利不利に関する強いこだわりを捨てること
美大卒だからといって、必ずしも美術系企業に就職したり、個人事業主として活躍するクリエイターになるべきだ、と考えることはない。美術に全く関連性のない職業に就くのも手だ。美術大学で取り組んだデッサンや工芸がどんなに楽しかったとしても、実際に就職してみて「自分の思っていた仕事内容と違う」と落胆する者は少なからず存在する。
自分が持っているスキルを少しでも発揮するために美大卒の肩書きを利用して「就職活動を有利に進めなければならない」と強迫観念を持つ必要はない。選り好みせず自分の仕事について考えれば、自然と様々な企業で働く選択肢が芽生えていくのではないだろうか。
重ねて言うが、就職活動の際は「美大卒のカードを有利に切れる職業を選ばなくてはならない」という決まりなど存在しない。有利不利に囚われず、本当に就職したい仕事について真剣に考える機会を設けるべきだ。
クリエイティブ職は資格が必須?

こだわりを捨てて考えてもなお美術関連の職業に就きたいと感じた場合は、特定の資格を取得して内定率のアップを狙うべきだ。クリエイティブ職の人物が取得している資格に関しては下記を参考にしてほしい。
- カラーコーディネーター検定試験
- Photoshopクリエイター能力認定試験
- Illustratorクリエイター能力認定試験
- Webデザイナー検定
- CGクリエイター検定
- DTPエキスパート
- 色彩検定
漫画家やイラストレーターを目指している場合は上記の資格を取得しても大きな恩恵を得ることはできないが、あったほうが幾分か気も楽になるはずだ。資格は所持していても決して損にならないため、余裕があれば取得しておくとよいのではないだろうか。
各資格に関しては資格を取得したことによる恩恵・試験詳細を紹介する公式ホームページにアクセスできるため、気になる資格があればぜひ検索していただければ幸いである。
近年はインターネット上で資料請求できる機会も増えており、数日でパンフレットを手に入れられるのが利点だ。ぜひ興味のある資格について調べてみてほしい。
就職が辛い・難しいと考えた際は大学院に進むことも検討しよう
美術大学を卒業した後の進路について何も考えていなかったり、就職活動が困難だと思っている場合、院進を選択肢に入れておくべきではないだろうか。金銭面に不安が生じるものの、自分の持っているスキルが心許ないのであれば技能を磨いた後に就職活動を始めることを推奨する。自由に使える時間が充分すぎるほど与えられるため、卒業後にどうするかを真剣に考える絶好のチャンスだ。
美術・芸術系の大学院では美術系学問をより体系的に学ぶことができる。四年間では吸収しきれなかった知識を得る良い機会でもあるため、希望する進路がなければ院進は悪くない選択肢なのではないだろうか。
面接の際は自分で作成したポートフォリオを持っていくべき?
イラストレーターやデザイナーとしての就職を考えている時、面接にポートフォリオを持参するべきか悩む方は多いだろう。ポートフォリオは他者に自分の力量を伝えるために必須のアイテムだ。自己アピールの際に重要な役割を果たすが、企業によってはポートフォリオを持参しなくていいケースもある。履歴書に添付する場合もあるため「必ずポートフォリオを持参する必要がある」とは断言できないのだ。事前に担当者へ連絡する、あるいは面接時にポートフォリオを提出してよいかを確認しておかなければならないだろう。
ポートフォリオは自分を売り込むために必要不可欠なアイテムではあるものの、相手の了承を得ることが大前提ということをくれぐれも忘れないようにしていただきたい。
美大卒が就職できない原因を理解した上で対策をおこなうべし

美術大学を卒業した学生が就職できないと言われる原因には「美術関連の仕事に関する知識が世間に浸透しておらず、具体的な内容が不明であること」が挙げられる。
また、企業に属さずにフリーランスとして活躍する姿を見て「定職に就いていない」と誤解されるケースも珍しくはない。
就職率・内定率の低さも拍車をかけているが、これらの要因を理解した上で対策を立てれば美大卒でも就職は容易である。あらためて、本記事の要点を振り返ってみよう。
- ①美大卒が就職できないと考えられる原因には業界への知識不足・就職率や内定率の低下が影響している
- ②妙なこだわりを捨てて資格を取得すれば自然と道は拓ける
- ③「面接には必ずポートフォリオを持参しなければならない」という決まりはないため注意しよう
就職先が決まらず悩んでしまっている場合、自分一人で延々と考えては時間を浪費するだけで終わってしまう。時には友人や家族、大学教員の力を借りながら就職活動にチャレンジすることを推奨させていただく。






